その他、あの本を読んで学んだこと

今までに何回にも渡って、読んだ本に関することを書いてきました。

elephantprosody.hatenablog.com



書きたいことは今までで大分書けたのですが、今回の記事では書ききれなかったことを忘備録的な感じで箇条書きで書いてければと思います。

・壁にぶつかった時にそれまでとは違う練習方法を試してみる
この重要性はM君に某音ゲーを教えた時、非常に痛感しました。それまでの練習法で詰まったなら、その練習を何も変えずに続けても効果は薄いです。
練習A、練習B、練習Cみたいな感じでいくつか練習法のバリエーションをもたせて、停滞したら別の方法に切り替えたりするのが大事なんだなと思いました。

・訓練で歳をとってからでも海馬は大きくなる。(子供の時期じゃなくても、脳を発達させることが出来る)
ロンドンのタクシー運転手になるのはかなり障壁が高く、かなりのことを記憶しなければならないみたいなのですが、
タクシー運転手になれた人の脳の大きさを調べたところ、記憶の形成にかかわるとされる「海馬」の部分が大きくなっていたとのことです。
私は記憶力だとかそういうものは先天的なものが大きいとそれまで思っていたので、その考えが覆りました。

・人間の能力には無限大の可能性がある
時が経つにつれて、
練習法を実践して素晴らしい結果を出した人達が練習法をまた洗練して、その人達が後継者を育てて・・・っていうのが繰り返されて、誕生する記録のレベルもどんどん上がっていき、昔では考えられなかったようなレベルに到達するということが色々なジャンルで見られています。

・若木矯正効果
本で印象的な文言があったので、引用しておきます。

若い脳、すなわち子供や青年の脳のほうが大人の脳より適応性が高く、訓練の効果は若い人の方が大きくなるという点だ。

 当書を読んでいると、小さい頃で無ければ育てられない脳の部分もあるみたいで、世界一のピアニストとか、囲碁や将棋のNo1等そのレベルを目指すなら、小さい頃からの訓練が無いと厳しいんだなと思いました。
しかし、大人になってからでも、限界的練習を積めば、十分なレベルアップは可能だということも書かれていますし、その通りだと思います。

・全体的な流れを事前にイメージする
何かを行う際に、シュミレーションを事前に行うことの有用性が書かれていて、仕事とかに活かせる話だと思いました。

・限界的練習は楽しくない
以前お話したバイオリンの学生達から聞き出した話の中に印象的なものがあったので、また引用します。

重要な発見の一つが、学生たちが能力向上に重要と答えた活動のほとんどについて、非常に負担が大きく、あまり楽しくないと感じていたことで、例外は音楽鑑賞と睡眠だけだった。トップクラスの学生から将来の音楽教師まで、誰もが能力を向上させるのは大変であり、そのために必要な活動を決して楽しんではいないことを認めた。つまり練習が好きで好きでたまらず、他の生徒より意欲が低くても練習量に影響しないという者は一人もいなかったのだ。学生たちにとことん集中して猛烈に練習する意欲があったのは、そんな練習が能力を向上させるのに不可欠だと考えていたからだ。


この話は凄い衝撃的でした。何かに優れている人は、それが楽しくて楽しくてしょうがなくて、ひたすら没頭した結果、実力をつけているのかなと思っていたので。
ここから言えるのは、「能力向上のための」練習は楽しくないということだと思います。
私はこのブログ書きは楽しくやらせてもらっているのですが、「ブログを書く能力向上」を目指してやっている訳では無く、書きたいことを書いているから楽しいんだなと。

・人間の能力の限界は遺伝的特徴で決まるというのは誤解である
限界的練習を積めば、誰だって自分が目指したい道で能力を向上させられるということが書かれています。納得です。

・相手の心的イメージを盗む方法
当書では繰り返し心的イメージを取得することの重要性を語っており、上手い人の心的イメージを盗むことが上達の近道になります。ただし、相手の心的イメージは相手が心の中で考えたりイメージしてることなので、当然一見では分かりません。
そのため、何かしらの方法で相手の心的イメージを掴まなければならない。以下のようなことが当書でも紹介されていました。

-作業の後で振り返りレポートを作成してもらい、どこが簡単でどこが難しかったかを記入してもらう
-その人に作業をしてもらっている最中に一度作業の手を止めてもらい、その時の思考プロセスやイメージしていることを質問して聞き出す


・苦しい練習を続けるテクニック
先程限界的練習は苦しい時もあり、そんな苦しみにも耐えながら、その物事を継続していかなければなりません。
当書では、スペリングビー・コンテストでの生徒たちに練習が楽しいかを質問して、
その結果、下記のような話だったとのことです。

彼らはスペリングを勉強することなど、好きでもなんでもなかったのだ。最も優秀な成績を収めた生徒を含めて、好きだと答えた者は一人もいなかった。何千もの単語を覚えるために一人で何時間も勉強するのは楽しくなく、ほかのことをしたほうがずっと楽しかったはずだ。最も優秀な成績を収めた生徒たちの顕著な特徴は、退屈さやほかの楽しい活動への誘惑に抗い、勉強に打ち込みつづける能力が格段に優れていたことだ。


また当書では、限界的練習を継続することの厳しさも説明しています。

要は目的のある練習は負担が大きいのである。継続するのは難しい、継続したとしても(ジムに定期的に通ったり、ギターを毎週何時間か練習したり)集中力と熱意を維持するのは難しいので、次第に頑張らなくなり上達が止まってしまう。

 

継続していくのが厳しい限界的練習に対しての対策法も当書では記述されています。
以下のことが書かれていました。
-続ける理由とやめる理由を洗い出し、継続する理由を強くするかやめる理由を弱くする。
-決まった練習時間を設け、他の仕事や注意散漫になる要素をすべて排除する

以前私が書いたバイオリンの学生達について下記のようなことが書かれてました。
-朝起きるとすぐに練習する傾向があり、その時間に他に何もすることがないようにスケジュールを組んでいた。

-週の平均睡眠時間がSランクとAランクの学生がBランクの学生より5時間近く多く、それは主に午睡(昼寝)の時間のところで差が出ている(これは限界的練習をした後で回復のために昼寝をしている)

-Sランクの学生のほうが余暇にどれだけの時間を費やしたりしているか正確に記憶しており、スケジュール管理により真剣に取り組んでいたことを示されている。


私が書いた記事に、当書の内容も含めて書いたものがあるのでそちらもぜひ参考にしてみて下さい。

elephantprosody.hatenablog.com

 

下記の重要性についても当書で触れられていました。
-十分な睡眠をとり、健康を維持すること
-練習時間を1時間程度で区切って集中して練習すること

また、長期間にわたって練習を続けると、
-身体も心も練習に慣れてくる
-練習が完全に楽しくなることはないが、練習への苦痛はだんだん減っていき、楽しいと厳しいの中間位になっていく

ということも書かれていました。
私も早く英語学習とプログラミング学習に関して、勉強慣れしていきたいです。


・意欲を高めるためるのは何か
先程やめる理由を抑える方法(他への誘惑を絶つ等)を当書の内容から書かせてもらいましたが、今度は続ける理由を強くするものは何かついて書かせて頂ければと。
続けたい気持ち≒意欲で、何が意欲を強くするのでしょうか。

意欲に関わることとして、下記のことが当書に書かれていました。
-内発的な願望
これは例えばブログを書くことそのものが好きでブログを書きたいみたいに、
その行為そのものが単純に好きだったり、やりがいを感じたりして、そのことをやりたいという意欲です。
能力が向上して結果が出てくると、能力そのものが意欲になったり、
人から褒められて自己認識が変わり、モチベーション向上に繋がるという話も書かれていて納得感がありました。

-外発的な目的
私が英語の勉強をしているのは今のところここによるところが大きいです。
英語を取得してエンジニアの仕事に活かしたい、
みたいにその技能を取得した先に手に入る未来を目指して、というケースがこちらに該当します。

他にも、自分が成功すると信じる気持ち、その分野でトップクラスになれると信じる気持ちが意欲に繋がる、
外発的意欲の中でも、他者からの尊敬や承認のような社会的意欲は協力だという話もされていました。

・練習への心構え
当たり前のことなのかもしれないけれど、もの凄く大事な一文があったので、引用します。

これだけは忘れないでほしい。練習中に注意散漫になったりくつろいだり、楽しんでいるだけでは、おそらく上達はしない。

 
先程、限界的練習は楽しくないという話がありましたが、
能力を本気で向上させたいと思うのならば、楽をしたい、楽しくやりたいという気持ちは度外視しなければいけないのかもしれません。甘さを捨てなければと思いました。

他にも、歌唱レッスンを受けている2つのグループに対して、質問をした調査が当書でありました。片方のグループはプロで、片方はアマチュアです。
そこでの調査結果に、下記のような記述がありました。

被験者はアマチュアかプロかにかかわらず、レッスン後にはレッスン前と比べて全員がリラックスして生き生きとしていたが、気分が高揚したと答えたのはアマチュアだけだった。歌唱レッスンによってアマチュアは楽しい気持ちになったが、プロはならなかった。両者の違いは、それぞれのレッスンへの向き合い方にある。アマチュアにとってレッスンは自己表現の場であり、日頃の悩みを歌で吹き飛ばし、歌うことの純粋な喜びを感じる時間だった。一方、プロにとってレッスンは歌唱技術を向上させるために発声技術や呼吸法などに集中する場だった。集中していたが、そこに喜びはなかったのだ。

プライベートレッスン、グループレッスン、一人での練習、あるいは試合や競技をすることも含めたありとあらゆる練習から最大の効果を引き出すカギはここにある。自分がしていることにとにかく集中するのだ。

 
カラオケにいったりして好きな曲を自分の好きなように歌うのと、
プロの歌唱練習とでは全然別物だなと改めて。
この話以外にも、長距離走選手の研究で、以下のようなことが本に記載されてました。

マチュア選手は走ることの辛さや疲労感から逃れるために楽しいことを考えたり空想にふけったりする傾向があるのに対し、トップクラスの長距離選手は自らの身体に意識を集中させ、最適なペースをつかみ、レースの間それを維持するのに必要な調整をしていく。

 

一流の人達は苦しみの中でも、そこから逃げずにそれに向き合っているんだなと、こういうプロの方の姿勢は本当に見習いたいです。

・練習は細分化された目標に対して、短時間で集中的に行う
こちらの話は以前の記事でも少しお話しました。こちらも、当書から文を引用させてもらいます。

集中して意識的に練習に取り組むことが何より大切なので、新しい技能をもっと早く取得するのに一番良いのは毎回明確な目標を設定して練習時間を短くすることだ

100%の力で短い時間練習するほうが、70%の力でもっと長く練習するより好ましい。これ以上集中できないと思ったら、練習は打ち切ろう。そして練習に最大限集中できるように、睡眠はしっかりとろう

この観点物凄い大事だと思いますし、心がけていきたいです。
ただ、こちらに関しては「何かの技能を上げるためのアウトプットの練習」に有効な話だと思いました。
知識の吸収や暗記のようなインプット作業はもちろん集中も大事ではありますが、かけた時間がものをいうことも多いので、ちょっと話が違うのかなと。
他にも原因を洗い出したり、改善方法を考えたりする、分析作業も、短時間で集中してやるという性質のものではない気がしました。


ベンジャミン・フランクリンの文章書き独学方法
この上達方法は今後役に立ちそうだなと思ったので、当書より引用しておきます。
フランクリンがイギリスの雑誌「スペクテーター」の著者と同じレベルの文章力を身につけるために取り組んだ独学方法です。

1:記事を何本かピックアップして、その記事を思い出せる最低限のヒントだけを書き留め、後日同等の質で文章を書けるか再現する特訓を行った。
自分で書いた文章を元の文章と比較してフィードバックと修正を行ったとのことです。この訓練で文章を書く明瞭さと説得力を身につけたとのことです。

2:「スペクテーター」の記事(散文で書かれている)を韻文に作り変え、元の記事の記憶が薄れてから、その韻文を散文に直す訓練をした。

散文と韻文の違いについては、書きのサイトから引用します。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

①、散文とは字数や音節の制限とか、韻をふんだりするような制限のない
普通の文章を言います。

②、これに対して、韻文とは言語、文字の配列、字数や音数などに
一定の規律(あえて制限とはいいませんが)のある文章です。
短歌や俳句が典型的ですね。

 

要は、
散文は私が今書いているようなブログとかに書かれている普通の文章で、
韻文は詩とかに書かれているような文章です。

詩は、韻律を考えたり、韻を踏んだりするため、普段使わない言葉を使わなければならず、つまりのところ別の書き方をすることで使える語彙の(知っている語彙ではなく、使える語彙というのが重要。その語彙を知っているのと使えるのは話が別)バリエーションを増やす特訓を行ったみたいです。
散文→韻文、韻文→散文への変換練習を行っていったことで、フランクリンは何かを表したい時最適な言葉を探す習慣がつき、記憶から呼び出せる語彙が増えたとのことです。
そしてこの練習は、英語のスピーキングやライティングにも活かせるなと思いました。いわゆる瞬間英作文の練習方法はこれと似ているなと。

3:『スペクテーター』の記事を使い、1文ずつヒントをバラバラの紙片に書き、シャッフルして順番が分からないようにする。記事や話の内容を忘れた後に、そのバラバラの紙片を一番論理的だと思える順番に並べ、ヒントをもとに文章を書き、そこで出来た分を元の記事と比較した。

このようにして、適切な文章構造と論理展開がされた文を書けるようにする特訓を行ったとのことです。

 

このベンジャミン・フランクリンが行った独学法はかなり学びになることが多いなと思いました。この考えを応用して、英語学習等自分の練習に取り入れていきたいです。

・質の高い心的イメージは、あらゆる事象を体系的にとらえることが出来ている
当書では心的イメージについて、以下のような説明がされていました。

突き詰めれば心的イメージとは事実、ルール、関係性などの情報がパターンとして長期記憶に保持されたものであり、特定の状況に迅速かつ的確に反応するのに役立つ。


私はかつて、物理が大の苦手科目でした。
まず公式が多過ぎるし、公式を覚えたところで使い方が分からないしで、もう何が何だかさっぱり状態でした。
でも、高3になってZ会で習い始めてから、一気に得意科目になりました。
微分積分を用いた物理を教えてくれて、
公式の意味や、1つの公式から他の公式を導出する方法等を徹底的に教えてくれたおかげで、公式の意味やその使い方がしっかり分かるようになりました。
それまでは繋がりが分からなかったたくさんの公式の繋がりが分かり、
体系的にとらえられるようになりました。

当書にもそのことに関連することが書かれていました。

すべての情報が、特定の行為の心的イメージとして統合されている場合、個別のかけらは互いに結びついたパターンの一部となり、それぞれの情報に文脈や意味が与えられるため作業がしやすくなる

 
これは、
質の高いイメージはあらゆる事象を体系的にとらえられている
と言うことが出来るでしょう。
そのことを表す例として、医師のことが書かれていました。

医学生とは異なり、経験豊富な医師は高度な心的イメージを身につけており、そのおかげで一見関係のなさそうな情報も含めてたくさんの事実を同時に考慮することができる。

同時に大量の情報を集め、検討することができるというのが、高度に発達した心的イメージの大きなメリットである。

診断のエキスパートといえる医師の研究では、彼らがさまざまな症状やそれに関連するデータをバラバラな情報として認識するのではなく、より大きなパターンの構成要素として認識することが明らかになっている。


他にも保険販売員に関する研究として下記のことが書かれていました。

大きな成功を収めている販売員は、そうでない人々と比べてはるかに複雑で統合された「知識構造」(本書で「心的イメージ」と呼んでいるもの)を持っていることがわかった。特に優れた販売員は、高度に発達した「こういう場合はこうする」という構造をたくさん持っていた。

 

音ゲーをM君に教えている時も、色々な具体的事象を抽象化して体系的にとらえることが大事という話をよくしていたので、ここら辺の内容は自分の考えを洗練していくのに非常に参考になる話でした。
そして、この体系化というのは自分の心がけ次第で意識的に行うことが出来ると考えています。
例えば、英語ならばsee、watch、lookはどれも「見る」系の動詞です。
これらの3つの動詞を「見る」系の動詞として覚えておく(体系的に覚える)のと、バラバラに単純に1語1語覚えるのでは、
前者の方が記憶に残りやすいです。

今まで私は将棋やチェスをやる人が、対局が終わった後に最初から最後までその対局をならべて再現出来るのは、将棋やチェスをずっとやる過程で記憶力が良くなったからだと思っていたのですが、
それが出来る主な理由は、たくさんの駒を塊(この塊は長期記憶として脳に保持されている)としてとらえ、色々な塊の繋がりを体系的に意味づけて覚えられているからみたいです。単純に1個1個の駒の位置を丸暗記しているからではなかったのです。


・・・・・以上で書きたいことを一通り書けたと思います。
今までの記事で書きたいことはある程度書けたと思っていたので、今回の記事は短めで終えられるかなと思いきや、今までで最長となってしまいました(笑)
でも、当書は本当にそれ位勉強になることが多かったんだなと改めて思いました。

次の記事を当書に関する最後の記事として、改めて読んで思ったこととか感じたことを、
最後に想いとして書ければと思います。