当書の肝、限界的練習とはその2

前回の記事では、何かに取り組む時に多くの人が漠然と練習をしてしまうこと、
そういう練習から抜け出した、「目的のある練習」についてのお話をしました。
今回はその目的のある練習より更に濃い練習である、限界的練習についてお話出来ればと思います。


当書で紹介されている、限界的練習の特徴は大きく以下となります。

・練習方法論が確立されていて、明確に定義された具体的目標がある
・きわめて専門性の高い先生に指導を受ける
・具体的目標に対しての練習を意識的に行い、全神経を集中させる
・フィードバックと修正(特に初期の頃は先生からのフィードバックが必要不可欠)

詳しく書いていきます。

・練習方法論が確立されていて、明確に定義された具体的目標がある
目標のある練習との決定的な差がここの部分です。先人が築いてきて、なおかつ実践されて効果が確実である練習方法論があるのと無いのでは、
上達スピードに雲泥の差があります。

この記事でも書きましたが、ピアノやバイオリンには既に上達のための方法論が確立されていて、スキルセットや具体的目標が明確になっているそうです。

昔水泳とかで、
クロール基礎1:25m泳げる
クロール基礎2:50m泳げる
クロール(スピード)1:25mを20秒切ることが出来る
クロール(スピード)2:25mを15秒切ることが出来る
クロール(フォーム)1:・・・
平泳ぎ基礎1 :・・・

みたいなのがあったりしませんでしたか?

この水泳の例だと、泳ぎ方、距離、タイム位しか書いていませんが、
実際はフォーム(これは手、足、体全体とかでも項目を細分化出来そう)、息継ぎとかの項目でもスキルレベルを測定出来そうです。
こういうものが、ピアノやバイオリンにはもっともっと具体的にあると考えて良いでしょう。

・きわめて専門性の高い先生に指導を受ける
囲碁や将棋のプロを目指すなら、弟子入りして、師匠に指導を受けることが当然のことになっています。
独学だとどうしても努力の方向性を間違えてしまって遠回りをしてしまうので、導いてくれる先生がいると目標に向けて直線的に進むことが出来るでしょう。
特に初めの頃は本当に何をどうして良いか分からないものです。右も左も分からない状態なので、ここで導いてくれる人がいないと足踏みをしてしまう可能性があります。
特にプロ級のレベルを目指していくのであれば、正しい方向で努力するよう導いてくれる師匠の存在は必須といっても過言ではないでしょう。

・具体的目標に対しての練習を意識的に行い、全神経を集中させる
「具体的」目標、この具体的というのがとても大事なところだと思います。
前回の記事で、

テニスのセカンドサーブの練習をする際に、
ここのエリア(縦何センチ、横何センチと具体的に決められた領域)に、(弱過ぎる力で狙いにいってはダメで)力7割位で打って10回打って8回入れる
というお話を書いたんですが、
こういう風に目標が「具体的」であることが、本当に、本当に重要なんだと。

例えばここで、
「サーブが上手くなりたいから、とにかくたくさんサーブを打って上達させよう」
みたいな練習法だと、あまりに目標が漠然(サーブが上手くなりたい)としていて、練習の効果もあまり期待出来ません。
具体的な目標Aをまず攻略する、次に別の具体的な目標Bを攻略する・・・これの積み重ねで確かな技術を取得出来るんだなと思いました。

・フィードバックと修正(特に初期の頃は先生からのフィードバックが必要不可欠)
囲碁の現在の日本No1の井山裕太さんは、師匠の石井邦生(九段)さんに自分の棋譜とその分析結果を送り、添削してもらっていたとのことです。

dic.nicovideo.jp


これは限界的練習における、このフィードバックと修正に他ならないなと思いました。
井山さんに関して印象的なエピソードを下記サイトで見つけたので、引用しようと思います。

www.nhk.or.jp

 

小学校に入ると石井邦生九段に弟子入り。
対局で負けるたびに泣いていた井山さんに、石井さんはあることを伝えました。

井山裕太さん
「当時は、よく涙を流している子どもでしたけど、それだけでは何回打っても、何万回打っても強くなれないと。
なぜ負けたのかを検証したり、反省したり、そういうことがないと、それ以上の進歩はないよと。」

それ以来、井山さんはすべての対局を書き起こし、自分の弱点を分析するようになりました。
同じミスを繰り返さないため、どこが悪かったのか、自分で考えるくせを身につけたのです。

 
やっぱり反省と改善が無いと、ただ数をこなしても前進は無いんだなと。
フィードバックと修正は、何かを上達させたいと思うなら、「やった方が良いこと」ではなく、「やらなければならないこと、必須」なんだなと。

当書では心的イメージの質が高くなってくると(ある程度の実力に到達すると)、自分のミスに気付けるようになるが、心的イメージの質が低いうちは(実力がないうちは)それにも気付けないという話もされています。
ある程度のレベルになってくると、自分でフィードバックと修正を繰り返して1人でも上達していけるようになりますが、心的イメージの質が十分でないうちは先生によるフィードバックと改善が必要不可欠と思われます。


・・・・・以上が限界的練習の詳細です。
前回書いた目的のある練習より更に優れているのは、
・確立された練習方法があって、項目が細分化されていて目標が具体的であること
・その道のエキスパートの先生が欠かせないと指摘していること


だと思います。
そして、この限界的練習の話はどんなジャンルにでも活かすことが出来ますし、本でもそういうことが書いてあります。
以前お話した心的イメージのお話と、今回お話した限界的練習の話を知った上で、
それではどのように練習していけば良いのでしょうか。
今後の記事でまた書いていければなと思います。